Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme
「それ、殿様に遅れるな。」
と大次郎の後を踏んで、道場を飛び出したが、その時はもう、先に出た文珠屋主従をはじめ、宗七も伊予之進も、大次郎の影も、その下谷練塀小路の横町にはなくて、暮れに近い日脚が白っぽい道に弱々しい光りを投げていた。
すぐそこの角は、名ある人のお囲い者の住居でもあるか、お約束の舟板塀に、冬の支度に藁を巻いた見越しの松が、往来に枝を拡げて、お妾の所在なさであろう、この夕暮を退屈そうに、今流行恋慕流しの一節が――。
「君は五月雨
思わせ振りや
いとど焦るる
身は浮き舟の
浪に揺られて
島磯千鳥――」
「殿様は、どこへいらしった。」
「どうも今日は、よく姿をお隠しになる。」
「また晦かれたのか。まあ、仕様がねえ。ぶらぶら歩いて行くうちには――。」
「ひょいとまた、そこらの横町から顔をお出しなさるだろう。」
「しかし、それにしても、あの恐ろしい面をした町人は何ものだ。出羽守と聞いたら、血相を変えてむかって来たが――。」
「あの岡っ引らしいやつも、殿様のお名前を聞いたら顔色を変えおったが――。」
「何だかさっぱり合点のいかねえことばかりだ。」
あははは、と笑い声を合わせた一行、大道狭しともと来たほうへ、ぶらりぶらりと歩き出したが――。