Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちのしゅっきょう
父の出郷
葛西 善蔵
Lesen Sie 父の出郷 (ちちのしゅっきょう) von 葛西 善蔵 (かさいぜんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.047 Zeichen · 18 Bildschirme
学校へはきゅうに郷里に不幸ができて帰ることになったからとFに言わせて、学校道具を持ってこさせた。昼のご飯を運んできた茶店の娘も残っていて手伝ったが、私の腹の底は視透かしているらしいのだが、口へ出しては言いださなかった。寺の老和尚さんも「そうかよ。坊やは帰るのかよ。よく勉強していたようだったがなあ……」と言ったきりで、お婆さんも、いつも私がFを叱るたびに出てきてはとめてくれるのだが、今度は引とめなかった。私たちの生活のことを知り抜いている和尚さんたちには、こうした結末の一度は来ることに平常から気がついているのだった。行李の中には私たち共用の空気銃、Fが手製の弓を引くため買ってきた二本の矢、夏じゅう寺内のK院の古池で鮒を釣って遊んだ継ぎ竿、腰にさげるようにできたテグスや針など入れる箱――そういったものなど詰められるのを、さすがに淋しい気持で眺めやった。妻に宛てた簡単な手紙も入れさせた。
「すんだら一杯飲もうか」と言って娘に仕度をさせた。
「まだ出るころじゃないのか?」と、弟の細君のお産のことを訊いた。
「もうとっくに時が来てるんでしょうから、この間から今日か今日かと待ってるようなわけで、今晩にもどうかというわけなんでしょう」