Japanische Klassiker mit Furigana
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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
Lesen Sie 犬田卯短編集二 (いちろうじん) von 犬田 卯 (いぬたしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.383 Zeichen · 103 Bildschirme
しまいはしないだろうかと考えた。ああ、バスに乗ればよかった。十銭ばかり惜しんだために、あれを人に買われてしまっては、それこそ取りかえしがつかなかった。
彼女は道を急ぎ出した。一時間を四十分に短縮することはあえて不可能ではなかった。かつてお裁縫を習いにこの路を町へ通っていた時分の、ある夕方のこと、怪しげな身装の、見も知らぬルンペン風の男にあとをつけられた時は、二十分とかからないで、沼岸のさびしいところを村はずれの一軒家の前までやって来たこともあったのだ。しかもそれは弱気を見せまいために決して駈けはしなかったし、つとめて平然と、だが心の中では出来るだけ早くと足を運んだのであったが――
「あんなつもりになれば、四十分みれば充分だわ。ご連中があれがいいこれがいいと迷っているうちには行き着ける。」
国道は沼岸を稍々一直線に走り、電柱が汀に面した片側を次第に小さくなって、そして森やまばらな木立に覆われた部落の不規則に連る地平へと消え込んで行っている。両側に植え付けられている水楊はすでに黄色い芽をふいて、さんさんと降る暖かい初春の日光に、ほのかな匂いを漂わせていた。