Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

Lesen Sie 狂い凧 (くるいだこ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.430 Zeichen · 226 Bildschirme

Aozora Bunko

――

「その初年兵教育が一番つらかったね」

加納は言った。

「三箇月が終って、わたしらは大同に移ることになった。北支蒙古と言ってもね、しょっちゅう寒いってことはない。四月末から五月になると、一斉に春が来る」

どっと押し寄せるような感じで、春がやって来る。樹々は芽ぶき、花をつけ、生色天地に満つという時候になる。栄介はちょっと想像に苦しんだ。

「砂漠にも花は咲くのかね?」

ただただ不毛の荒涼たる地帯を考えていたのに、いきなり開花の風景が重なって来たので、彼は戸惑いを感じたのだ。

「砂漠ばかりじゃありませんよ」

加納は苦笑いをした。

「山もあれば、川もある。街や部落の周辺には木が生えているし、畠だってある。風のない日は空が抜けるように青くてね、あれで戦争がなけりゃ、桃源境と言っていいでしょうな。アンズ、リンゴ、ナツメなどの実もなるしね」

「夏は?」

「夏はすごく暑いね。空気が乾き切っているんで、じりじりと照りつける。太陽の直射の下を歩いていると、フライパンでから煎りされているようなもんだ。行軍していると、汗が出て、服にしみ通る。ところが日陰に入って十分も休んでいると、もう汗は乾いて、つまり蒸発してしまうんだね。