Japanische Klassiker mit Furigana
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Lesen Sie 狂い凧 (くるいだこ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.430 Zeichen · 226 Bildschirme
加納は遅れて来たので、城介の棟に草鞋をぬぐ恰好になった。酒保にかけ合ったが、酒を出して呉れない。城介らは間もなく南方に転属することが判っていたので、酒保の方で渋ったのである。
「ちぇっ。けちな野郎ばかりだ」
城介はぼやきながら、それでも歓迎のために、土塀を乗り越えてパイチュウを買って来た。パイチュウを飲みながら、加納は訊ねた。
「戦況の具合は、どうだね」
霊丘県の山奥の六号無線機では、新聞通信もろくに入らない。宣戦布告は判ったが、その後の戦況はほとんど判らないのである。
「うん。うまく行ってるらしい」
城介は言った。
「また忙しくなりそうだよ。ここと違って、暖かいのが取得だけどな」
城介たちの転属先は香港である。香港にも陸軍病院があるが、それだけでは間に合わないので、第二陸軍病院を開設する必要に迫られていた。
「つまりおれたちは、第二病院の開設要員なんだ」
「じゃ当分帰れそうにないな」
「帰るって、内地にか?」
城介はパイチュウを傾けながら、反問した。
「それとも奥地にかね?」
「その時の城介君の顔色は――」
私は訊ねた。
「どんな具合でしたか」
「真顔だったね。わたしと同じ心配してるなと思ったよ」