Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きょうかしあかちょこべえ

狂歌師赤猪口兵衛

夢野 久作

Lesen Sie 狂歌師赤猪口兵衛 (きょうかしあかちょこべえ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.418 Zeichen · 79 Bildschirme

Aozora Bunko

まだ夏にもならぬのに裾縫の切れた浴衣一枚を荒縄の帯で纏うた、真黒い素跣足。何にするのか腰に赤い、新しい渋団扇を二、三本差したまま、目明の良助の後からヨチヨチと那珂川に架かった水車橋を渡って行くうちに、二人とも揃って前後を見まわした。あたりに人通りの絶えた処を見澄ますと、互いにうなずき合いながら仲よさそうに話し始めた。

「一体全体、猪口兵衛どん。アンタはこの二日二夜、何処に消え失せて御座ったもんかいナ」

「アハハハ。この頃は忙がしゅうてなあ。花の咲く頃は毎年の事じゃ。あっちの花見酒で酔い潰れ、こっちのお祝い酒で奢り潰されてなあ」

「太平楽なにも程がある。わしゃこの二、三日、寿命を縮める思いをしながらアンタの行方を探いておったがなア」

「アハハ。さすがの目明良助どんもこの私の行方ばっかりは、わかり難かったろうなあ。……ところでその用と言うのは何事かいな……」

「……ほかでもないがなあ猪口兵衛どん。あの博多一番の分限者の一人娘で、蔵元屋のお熊さんチュウテなあ。十八か九の別嬪が、一昨日の朝早よう、万延寺の菩提所で、胴中から真二つに斬られとった騒動なあ……最早、聞いておんなさるじゃろう」