Japanische Klassiker mit Furigana
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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.020 Zeichen · 131 Bildschirme
の方角から、どう云う風に連れて来られたのか見当が付かず、彼方へ行っては踏み迷い、此方へ行っては踏み迷いして、又もとの場所へ戻って来る。昔だったら、一旦こうと思い込んだらどんなに路のない所でもガムシャラに突進したものが、今では自信がなくなって、様子の知れない所へ分け入ると怖気がついて、ひとりでに足がすくんでしまう。きっとリリーは、そんな風にして案外遠くの方までは行くことが出来ず、この界隈をまごまごしていたのであろう。そうだとすれば、昨日の晩も、一昨日の晩も、夜な夜なこの二階の窓の近くへ忍び寄って、入れて貰おうかどうしようかと躊躇いながら、中の様子を窺がっていたのかも知れない。そして今夜も、あの屋根の上の暗い所にうずくまって長い間考えていたのであろうが、室内にあかりが燈ったのと、俄かに雨が降って来たのとで、急にああ云う啼き声を出して障子を叩く気になったのであろう。でもほんとうに、よく帰って来てくれたものだ。よっぽど辛い目に遭ったればこそであろうけれども、矢張私をアカの他人とは思っていない証拠なのだ。それに私も、今夜に限ってこんな時刻に電燈をつけて、雑誌を読んでいたと云うのは、虫が知らしたせいなのだ。