Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
それをじっと見詰めていた夫人は一言いい捨て、身を反らしながらすーっと去りました。
「勝手におしな」
代って、ひょっこりうちのしまが現れました。しまはわたくしの後から電車で来てお勝手の手伝いをしていたのだそうです。しまはかなりわたくしを静めるこつを知っているので、わたくしはどうやら慰められ、抱きかゝえられて機嫌直しに裏の田圃へ連れ出されました。
小川が流れています。その片側に蓋の無い大きく四角い樋が通っていて綺麗な水が早瀬のように流れています。樋は錆び朽ちていると見え、途中の板の合せ目からも穴の個所からもざあ/\水は小川の中へ零れています。そのくらいな洩れはちっとも影響しないように水は樋のふちの青苔に溢れて流れています。
みそ萩、露草、猫じゃらし、そういった雑草がわたくしの立つ道端から樋の水を覆って乱れ伏しています。
「蝗がいますよ。取ってごらんなさい、お蝶さま」
取ろうとすると、あの小舟のような形をした虫の舳のようなところについている橡の実いろの眼が急に大きく目立ってわたくしを睨んでいるようです。怖々、手を近づけて行くと、蝗はそろ/\葉裏へ移り廻って行き、わたくしが思い切って眼をつぶって葉を握ると、露が冷たく掌に握られて蝗は樋の水に斜に落ち込んだまゝ、ぐい/\水に流されて行きます。