Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
橋の下の乞食の文吉は、このことをよく知っていました。彼の懐には口をあえいでいる鮒やうぐいがもう六七匹も入っています。懐の魚の跳ねる響を肉体に感ずると彼は腹を引込め、眠いような眼つきで薄笑いをしました。
文吉は魚を狙いつゝ、あんなところまでも洲があるかと思う辺まで河心へ乗出しています。そこはもう対岸に近く、葭のまばらな岸の根に食込んで、土手の投影の中に河の本流が上げ潮の早い流勢を見せています。
橋の欄干に大人の影も混って人の数が増しました。子供は怒鳴りくたびれて声を嗄らしています。
「どうだろう。文公は泳ぎを知ってるか知らん」
「なに、トックリさ」
「あすこで一つ滑ったら土左衛門だぜ」
「もっとも、あいつは土左衛門には前に一度なりかゝったことがある。試験済みだ」
大人も子供も混ってどっと声を立てて笑いました。
「土左衛門じゃない。心中の仕損こないよ」
「心中じゃない。救けに入って自分もぶく/\になったのよ」
網シャツに白ズボンを穿いた年配の男がバットの灰を欄干にはたきながら言いました。
「面白そうに言うな。どっちにしても、また手数のかゝるのはおいらだ」
それは町会の小使の金さんでした。