Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うまれいずるなやみ

生まれいずる悩み

有島 武郎

Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme

Aozora Bunko

た。心の上澄みは妙におどおどとあわてている割合に、心の底は不思議に気味悪く落ちついていた。それは君自身にすら物すごいほどだった。空といい、海といい、船といい、君の思案といい、一つとして目あてなく動揺しないものはない中に、君の心の底だけが悪落ち付きに落ち付いて、「死にはしないぞ」とちゃんときめ込んでいるのがかえって薄気味悪かった。それは「死ぬのがいやだ」「生きていたい」「生きる余席の有る限りはどうあっても生きなければならぬ」「死にはしないぞ」という本能の論理的結論であったのだ。この恐ろしい盲目な生の事実が、そしてその結論だけが、目を見すえたように、君の心の底に落ち付き払っていたのだった。

君はこの物すごい無気味な衝動に駆り立てられながら、水船なりにも顛覆した船を裏返す努力に力を尽くした。残る四人の心も君と変わりはないと見えて、険しい困苦と戦いながら、四人とも君のいる舷のほうへ集まって来た。そして申し合わしたように、いっしょに力を合わせて、船の胴腹にはい上がるようにしたので、船は一方にかしぎ始めた。

「それ今ひと息だぞっ」

君の父上がしぼり切った生命を声にしたように叫んだ。