Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
船! ‥‥船!
濃い吹雪の幕のあなたに、さだかには見えないが、波の背に乗って四十五度くらいの角度に船首を下に向けながら、帆をいっぱいに開いて、矢よりも早く走って行く一艘の船!
それを見ると何かが君の胸をどきんと下からつき上げて来た。君は思わずすすり泣きでもしたいような心持ちになった。何はさておいても君たちはその船を目がけて助けを求めながら近寄って行かねばならぬはずだった。余の人たちも君と同様、確かに何物かを目の前に認めたらしく、奇怪な叫び声を立てた漁夫が、目を大きく開いて見つめているあたりを等しく見つめていた。そのくせ一人として自分らの船をそっちのほうへ向けようとしているらしい者はなかった。それをいぶかる君自身すら、心がただわくわくと感傷的になりまさるばかりで、急いで働かすべき手はかえって萎えてしまっていた。
白い帆をいっぱいに開いたその船は、依然として船首を下に向けたまま、矢のように走って行く。降りしきる吹雪を隔てた事だから、乗り組みの人の数もはっきりとは見えないし、水の上に割合に高く現われている船の胴も、木の色というよりは白堊のような生白さに見えていた。