Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うまれいずるなやみ

生まれいずる悩み

有島 武郎

Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme

Aozora Bunko

今までの人数の二倍も乗っているように船は動いた。岸から打ち上げる目標の烽火が紫だって暗黒な空の中でぱっとはじけると、々として火花を散らしながら闇の中に消えて行く。それを目がけて漁夫たちは有る限りの艪を黙ったままでひた漕ぎに漕いだ。その不思議な沈黙が、互いに呼びかわす惨らしい叫び声よりもかえって力強く人々の胸に響いた。

船が波の上に乗った時には、波打ちぎわに集まって何か騒ぎ立てている群衆が見やられるまでになった。やがてあらしの間にも大砲のような音が船まで聞こえて来た。と思うと救助縄が空をかける蛇のように曲がりくねりながら、船から二三段隔たった水の中にざぶりと落ちた。漁夫たちはそのほうへ船を向けようとひしめいた。第二の爆声が聞こえた。縄はあやまたず船に届いた。

二三人の漁夫がよろけころびながらその縄のほうへ駆け寄った。

音は聞こえずに烽火の火花は間を置いて怪火のようにはるかの空にぱっと咲いてはすぐ散って行く。

船は縄に引かれてぐんぐん陸のほうへ近寄って行く。水底が浅くなったために無二無三に乱れ立ち騒ぐ波濤の中を、互いにしっかりしがみ合った二艘の船は、半分がた水の中をくぐりながら、半死のありさまで進んで行った。