Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
その望みをふり捨ててしまえる事なら世の中は簡単なのだ。
恋――互いに思い合った恋と言ってもこれほどの執着はあり得まいと君自身の心を憐れみ悲しみながらつくづくと思う事がある。君の厚い胸の奥からは深いため息が漏れる。
雨の日などに土間にすわりこんで、兄上や妹さんなぞといっしょに、配縄の繕いをしたりしていると、どうかした拍子にみんなが仕事に夢中になって、むつまじくかわしていた世間話すら途絶えさして、黙りこんで手先ばかりを忙しく働かすような時がある。こういう瞬間に、君は我れにもなく手を休めて、茫然と夢でも見るように、君の見ておいた山の景色を思い出している事がある。この山とあの山との距りの感じは、界の線をこういう曲線で力強くかきさえすれば、きっといいに違いない、そんな事を一心に思い込んでしまう。そして鋏を持った手の先で、ひとりでに、想像した曲線をひざの上に幾度もかいては消し、かいては消ししている。
またある時は沖に出て配縄をたぐり上げるだいじな忙しい時に、君は板子の上にすわって、二本ならべて立てられたビールびんの間から縄をたぐり込んで、釣りあげられた明鯛がびんにせかれるために、針の縁を離れて胴の間にぴちぴちはねながら落ちて行くのをじっと見やっている。