Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
しかしこの界隈はもう静まり返っていた。
「だめだ」
突然君はこう小さく言って往来のまん中に立ちどまってしまった。そうして立ちすくんだその姿の首から肩、肩から背中に流れる線は、もしそこに見守る人がいたならば、思わずぞっとして異常な憂愁と力とを感ずるに違いない不思議に強い表現を持っていた。
しばらく釘づけにされたように立ちすくんでいた君は、やがて自分自身をもぎ取るように決然と肩をそびやかして歩きだす。
君は自分でもどこをどう歩いたかしらない。やがて君が自分に気がついて君自身を見いだした所は海産物製造会社の裏の険しい崕を登りつめた小山の上の平地だった。
全く夜になってしまっていた。冬は老いて春は来ない――その壊れ果てたような荒涼たる地の上高く、寒さをかすかな光にしたような雲のない空が、息もつかずに、凝然として延び広がっていた。いろいろな光度といろいろな光彩でちりばめられた無数の星々の間に、冬の空の誇りなる参宿が、微妙な傾斜をもって三つならんで、何かの凶徴のようにひときわぎらぎらと光っていた。星は語らない。ただはるかな山すそから、干潮になった無月の潮騒が、海妖の単調な誘惑の歌のように、なまめかしくなでるように聞こえて来るばかりだ。