Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
その一分が六十回でやっと一時間、百二十回でやっと二時間、仮りに三時間待つものとしても、このしょざいない、どうにもこうにもしようのない「一分」を、セコンドの針がチクタク、チクタクと、円を一周する間を、百八十回こらえねばならない! それが三時間どころではなく、四時間になり、五時間になり、或は半日、一日になり、二日にも三日にもなったとしたら、待ち遠しさと恋しさの余り、私はきっと発狂するに違いないような気がしました。
が、いくら早くても浜田の来るのは夕方になるだろうと、覚悟をきめていたのでしたが、電話をかけてから四時間の後、十二時頃になって、表の呼鈴がけたたましく鳴り、続いて浜田の、
「今日は」
という意外な声が聞えた時には、私は覚えず、嬉し紛れに飛び上って、急いでドーアを開けに行きました。そしてソワソワした口調で、
「ああ、今日は。今すぐ此処を開けますよ、鍵が懸っているもんですから」
と、そう云いながらも、「こんなに早く来てくれようとは思わなかったが、事に依ったら訳なくナオミに会えたんじゃないかな。会ったら直きに話が分って、一緒に彼女を連れて来てでもくれたんじゃないかな」