Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しろくれない

白くれない

夢野 久作

Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

続いて残る九人の生命が相次ぎて磔刑柱の上に消え行く光景を、眼も離さず見居りたるわれは、思はず総身水の如くなりて、身ぶるひ、胴ぶるひ得堪へむ術もあらず。わなゝく指にて裾を紮げ、手拭もて鉢巻し、脇差の下緒にて襷十字に綾取る間もあらせず。腕におぼえの直江志津を抜き放ち、眼の前なる青竹の矢来を戞矢々々と斬り払ひて警固のたゞ中に躍り込み、

「初花の怨み。思ひ知れやつ」

と叫ぶうち手近き役人を二三人、抜き合せもせず斬伏せぬ。

素破。狼藉よ。乱心者よと押取り囲む毬棒、刺叉を物ともせず。血振ひしたるわれは大刀を上段に、小刀を下段に構へて嘲み笑ひつ、

「やおれ役人輩。よつく承れ。

役人の無道を咎むる者無きを泰平の御代とばし思ひ居るか。かほどの無道の磔刑を、怨み悪む者一人も無しとばし思ひ居るか。

われこそは生肝取りの片面鬼三郎よ。汝等が要らざる詮議立てして、罪も無き罪人を作る閑暇に、わが如き大悪人を見逃がしたる報いは覿面。今日、此のところに現はれ出でたる者ぞ。これ見よやつ」

と叫ぶとひとしく名作、直江志津の大小の斬れ味鮮やかに、群がり立つたる槍襖を戞矢々々と斬り払ひ、手向ふ捕手役人を当るに任せて擲り斬り、或は海へ逐ひ込み、又は竹矢来へ突込みつゝ、海水を朱に染めて闘へば、四面数万の見物人は鯨波を作つて動揺めき渡る。