Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しろくれない

白くれない

夢野 久作

Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

さて逃ぐる者は逃ぐるに任せつつ、死骸狼藉たる無人の刑場を見まはし、片隅に取り残されたる手桶柄杓を取り上げ、初花の磔刑柱の下に進み寄りて心静かに跪き礼拝しつ。

「やよ。初花どの。霊あらば聞き給へ。御身の悪念は此の片面鬼三郎が受継ぎたり。今の世の悪念は後の世の正道たるべし。痛はしき母上の御霊と共に、心安く極楽とやらむへ行き給へ。南無幽霊頓性菩提」

と念じ終つて柄杓の水を、血にまみれたる初花の総身に幾杯となく浴びするに、数万の群集の鬨を作つて湧き返る声、四面の山々も浮き上るばかりなり。

さて、わが身も心ゆくまで冷水を飲み傾くるに、其の美味かりし事今も忘れず。折ふし向岸の諏訪下の渡船場より早船にて、漕ぎ渡し来る数十人の捕吏の面々を血刀にてさし招きつゝ、悠々として大文字山に登り隠れ、彼の大判小判の包みと、香煙の器具一式とを取出して身に着け、鞘を失ひし脇差を棄てゝ身軽となり、兼ねてより案内を探り置きし岨道伝ひに落ち行く。

かくて其夜は人里遠き山中に笹原の露を片敷きて、憐れなる初花の面影と共寐しつ。明くれば早くも肥前一円に蜘蛛手の如く張り廻されし手配りを、彼方に隠れ、此方に現はれ、昼寝ね、夜起きて、抜けつ潜りつ日を重ね行くうちに、いつしか思ひの外なる日田の天領に紛れ入りしかば、よき序なれと英彦山に紛れ入り、六十六部に身