Japanische Klassiker mit Furigana
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そぼのために
祖母のために
宮本 百合子
Lesen Sie 祖母のために (そぼのために) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.632 Zeichen · 16 Bildschirme
「一寸用で国府津まで行くと申上て来たからその積りでいてくれ。遠くだと落胆なさるといけないから」
「そうお、私困ったわ、父様が九州へいらっしゃると云ってしまってよ、もう」
「変だね、始めて聞くように云っていらしったよ」
「じゃあお忘れになったのよ、却ってよかったわ」
父の旅行先には、毎日夕刻「ハハカワリナシ」と電報を打った。祖母は、父の多忙のため、幾日も顔を見ないことに馴れていた。旅行については何もきかず、蜜柑の汁、すっぽんのスープ、牛乳、鶏卵などを僅に飲みながら、朝になり夜になる日の光を障子越しに眺めている。口を利くのは、まだ起きてはいけないかという質問と、何故こんな病気になったろうという述懐の時だけである。私の友達が綺麗なカアネーションを持って見舞に来てくれた時、祖母は始めて、病気を訴える以外に口を利いた。
「美しい花だことない、こんな花は日本で咲きますか」
繰返し繰返し名を訊き、飽かず眺めた。祖母は一体に風流心のない人であった。部屋でも、塵なく片づいてさえおれば堪能しているのに、この時三輪の花に示した優しさは、前例ないことであった。祖母は御愛素でなくその華々しい薄桃色の草花を愛した。