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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme

Aozora Bunko

部屋全体が煙っている。紫陽花色に暈かされている。とは云え煙りこめているのではない。それは光の加減からであった。

穹窿形をした組天井、そこから龕が下っている。瓔珞を下げた龕である。さあその容積? 一抱えはあろうか! 他界的な紫陽花色の光線が、そこから射しているのであった。

部屋の四方は板張りである。板張りは純白に塗られている。釜の据えてある左手に、錦の帳が懸けられてある。部屋の外へ通う戸口だろう。深い襞を作っている。襞の窪みは蔭影をつくり、襞の高みは輝いている。

足が冷々と冷たかった。で桔梗様は床を見た。床は石畳になっていた。白と黒との碁盤形、それに畳まれているのである。

シン、シン、シンと湯の煮える音! それが唯一の音であった。

が、もう一つ音がした。ドーン、ドーンという音である。岸にぶつかる波の音だ。非常に遠々しく聞こえて来る。

それからもう一つ音がした。ドン、ドン、ドン、ドンという音である。滝の落ちるような音である。

その他には音はない。部屋内は気味悪く静かである。

気丈で無邪気な桔梗様にも、この光景は恐ろしかったらしい。

「ここはいったいどこなんだろう」