Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme
周囲半里はあるだろうか、大きな池が湛えられている。その岸に点々と家がある。
ひときわ大きな木造家屋は、全く風変りのものであった。一口に云えば和蘭陀風で、柱にも壁にも扉にも、昆虫の図が刻ってある。真昼である、陽があたっている。
と、玄関の戸をひらき、現われた一人の武士がある。何んと一式小一郎ではないか。
前庭をブラブラ歩き出した。
「いい景色だな、風変りの景色だ。日本の景色とは思われない」
こんなことを口の中で呟いている。
「小一郎様」
と呼ぶ声がして、家の背後から現われたのは、笑みを含んだ桔梗様であった。
「ご気分はいかがでございます」
「お蔭で今日はハッキリしました」小一郎は愉快そうに笑い返した。
「憎い大水でございましたことね」
「かえってお蔭で昆虫館へ参られ、私には本望でございましたよ。その上美しい声の主の、あなたにお目にかかれましたのでな」
「おや」と云うと桔梗様は、花壇の方へ眼をやった。四季咲き薔薇の花の蔭から、誰か覗いていたからである。二人の話を盗み聞くように。
十三
「どうなされました?」と小一郎は、桔梗様の顔を見守った。
「いいえ何んでもございません」