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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

その朝は、こうして山中の杣小屋にお身を休ませられ、以後二日、それも夜だけ、彷徨いをつづけたあげく、三日目の夜明けごろは、まったく疲れはてたお姿を、神童子越えの路傍に茫としておいでだった。

神童子越えは、笠置から山つづき四、五里、瓶ノ原の西方(現・山城国相楽郡)である。

――藤房、季房も、三日までは、口中の食も断ちければ、足たゆみ、身疲れて、今は、いかなる目に逢ふとも、逃げぬべき心地もせざりければ……。

とは「古典太平記」がいっているところだが、冷たい晩秋の山雨に吹き打たれたあげく、二日三晩もの彷徨いを、天皇までが、まったくお口に一物を摂らなかったとはおもわれない。

おそらくは季房が、木樵や炭焼き小屋を窺っては、持ちあわせの物代を食に換えて来たり、野葡萄だのあけびのツルなども曳いて、かつて九重の大膳寮では見もされぬ奇異な物も、柏の葉に載せて供御に差し上げたのではあるまいか。

いずれにせよ、三名とも、この朝はもう疲労にかすんで、歩むつもりの足も前に出ず、よろ這うていたほどだろう。

いかに後醍醐のご気性であろうにせよ、肉体のご困憊には剋ちえない。十善の天子とお生れあっていらい、初めて“非情な世の粗土”というものに、そのお跣足を噛まれたのである。