Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

おん目は赤濁み、蒼白な龍顔にはお髪がみだれかかり、白絹の小袖袴もあとかたなく、泥のみならず血痕も滲ませておられたと、「花園院御記」には見える。

「藤房……」

「お上」

「つかれた。……ああ、つかれてきた」

「おくるしげなおん息、大事ございませぬか」

「赤坂はまだか」

「まだ、ここは」

「楠木のいる赤坂とやらは、そのように遥かなのか」

「日ごろの旅で急いでも、二日路ほどはござりますれば」

「木津川もまだ越えてはいず。……さて、いつ行き着けようぞ」

かたわらの松の根がたを見かけると天皇はわれともなくお腰をよせて、そのまま息を休められるご容子だった。藤房も季房も、仆れるように、あたりの松の根にからだを崩した。

「…………」

ここは神童子越えのうちの峠の一つ。幸いに、通る者はなかったものの、君臣三名は、そのまま昏々と絶え入りそうな姿だった。

と、冷たい雫が、襟もとへぱらと降った。――ふと、現に返った後醍醐は、愕とお顔を振りあげて、そのお眸を朝雲にすえたまま、

さして行く

笠置の山を出でしより

天が下には

かくれがもなし

低いが、朗として洩るるお唇ずさみをきいて、藤房もすぐこう詠んだ。