Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「おうっ、公卿だな」
彼らは、近づくやいな、もう捕ったも同様な獲物と眺めながら、ゲラゲラ笑い合って、矢交えを外し、すぐ追ッついて来た徒歩の兵どもへ、馬上からあららかに命じていた。
「なに、縄か。いや縄目にもおよぶまい。ただ尻帯をとらえて引ッ立てろ。……そうだ。ひとまず内山へだ」
彼らは、これが天皇とは考えてもみなかったのである。たんに殿上の貴人とのみ見て、日ごろの反抗心と拾い得た功名とに野性の舌ナメずりをしたものだった。兵の乱暴さにいたっては、いうまではない。そこらの枯れ木などを手にするやいな「……おうっ」と、天皇のおそばへ迫り、そして「歩けッ」とばかり竹や棒きれを振りかぶった。
藤房は毛穴をよだてた。彼の日月はまッ暗な虚空と変り、グラと奈落の口もとでかかとを踏まえるような思いだった。季房も背中合わせに大手をひろげ、
「匹夫。ひかえろッ」
「無礼すなっ」
と、絶叫した。
「な、なにが無礼」
と、嘲りかけるのを、いわせもはてず、藤房はさらに体じゅうのものをふりしぼって。
「ここにおわせられるは、ただ人ではないぞ。よも、なんじらとて、文盲の田夫野人でもあるまいが」