Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
十月半ばである。万木の落葉や、秋風のさけびは、
「笠置は陥ちた」
「天皇も捕まったぞ」
と、赤坂の孤塁へ、夜も日も告げているようだった。
寄せ手の陣から、異様な唸りをひいて飛んで来るかぶら矢の結び文も、再三、
降伏せよ
と、すすめ
なんのための戦いか
とも書いている。
まったく、幕軍側からみると、石と材木の組み合せにすぎない一孤塁に拠っている人間どもの妄念は、ただただ、「奇態な奴らよ」としか思われなかった。
が、一ト揉みにと、当ってみればおそろしく強いし、城中の結束は見事にピンと張りを示すので、なおさら理解できないものがある。
そこで、寄せ手は、城兵の心理をついて「降伏して出る者はみな助けん。正成以外はその罪を問わず」という矢文を、土塁や竹楯の内へむやみに射こんでみたが、それにもなんの反応はない。
「やめろ、やめろ」
後陣の大将が代って出た。そして新手を誇って言った。
「しょせん、奴らは死に神につかれているのだ。望みのままここを奴らの墓場にしてやる」
鼓を鳴らし、陣鉦をたたき、数千のかぶと虫が、東国訛りの将に叱咤されては、赤坂の丘の下へ向ってまッ黒に駈け、たちまち丘の三方にわたるカラ濠を埋めつくす。