Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
失恋と女の死が、自分を今日にいたらしめていたものだった。――ふしぎである。自分の遁世も、自分できり拓いて来たつもりでいたが、やはり運命に吹き舞わされつつこう生きている一片の生命なのか。
運命はある。否めない。
逆に、あんなにまで、芸道へ生きたいといっていた元成と卯木の夫婦すらも、ついに時の浪に攫われて、余儀なく以前の武士に返ったと、昨日の便りでは告げていた。
では世の種々相は、みな運命か。人々の意志もじつは運命の従僕にすぎず、そして戦争なども、季節のごとく、たれが好まないでも、自然におこってくるものなのか。
そうとは思えぬ。
としたら、たれが火つけの下手人だろう。いや自分にかかる運命すらも捌きのできない人間が、ただ一個でそんな魔力をほしいままには出来ッこない。衆というものらしい。衆愚のなす業らしい。じゃあ衆愚とはなんだ。どんな化け物か。――それもやっぱり一個一個の中に住んでる物の怪ではあるまいか。
「……もし、兼好さまえ」
台所で声がした。
いまじぶんになると、毎日台所へ来て、水瓶に水を漲ったり、洗い物などしてゆく近所の洗濯婆さんであった。
「へんな武者がお二人、枝折から庭の方へ、黙って、いきなり通って行かしゃりましたぞえ」