Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「やあ」
と、出あいがしら。
越後守北条仲時は、じぶんを捜してこれへ来たらしい佐々木道誉を見て、
「今暁来、ご苦労だったな」
と、まず言った。
「あなたこそ」
道誉も、探題仲時の重責を心から察して、
「事あるごとに、ここのお守り役も大抵ではありますまい」
と、ねぎらった。
樗門の向うは、疎林にかこまれた別院である。いちめん大地は朽ち落葉で埋まって見え、寂として、人声もない。
後醍醐はそこに囚われておいでだった。陽あたりの悪い冬木立のうちに寒々と見える板屋廂の古建物がそれである。――それをめぐッて、はるか遠くの四隅に急ごしらえの仮屋建ての兵舎があった。すくなくも三、四百の兵は昼夜交代で万一の変にそなえているものらしい。
「いや、まったく」
仲時は、探題としては若すぎるほどな年歯だが、それでもおおいえない疲労の翳を見せながら、しいて薄く笑った。
「時務、軍務などは、いくら多端でも何ともせぬが、先帝(後醍醐)のお守りにはとんと手を焼いたぞ。佐々木、早よう何とかならんかな」
「ならぬかとは」
「ご処置の決定だ」
「そこは、鎌倉表においても、あらゆる議事を尽しておりましょうが、ほかならぬ前天皇のことですから」