Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
どうかお旅先では、いちばいお気をつけられませい」
と、さっそくに暇をつげ、兼好はすぐ帰ってしまった。
道誉はなにか、味気ないここちがした。
兼好と会えばいつも、酒をくんで、公務や世事をわすれるのが常である。こう、そッけなく別れたことなどめったにない。
「だが」
彼は自分の顔を想像してみる。
兼好に長居をさせなかったのも、先客の松田権ノ頭をそうそうに立ち帰らせたのも、この顔つきが追い立てたものだと思う。さりげなくしているものの、
「さて、これからの、但馬、伯耆の山旅を、事なく、越えられるか否か」
に思いいたると、不安は、顔へ出ずにいなかった。
いうまでもなく、それは途中で後醍醐奪回を狙う宮方残党の嵐の前ぶれにたいする彼の予感にほかならない。
たとえば、今日の一客。――備前の松田権ノ頭なども、なにかここの幕旅や、警固の兵数などを、さぐりに来たものではないか。
「うさんな眼だった」
道誉は、充分疑っている。
しかし、備前、備後方面へは、さきに鳥羽から家臣の田子大弥太を飛ばして、すでに手は打っておいた。「――なおこれ以上、右顧左眄していては、一歩もすすまぬ。まず対策は、その日その日に」