Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
のうちにも見える。
むかし美作ノ国に、中参、高野と申す神まします。
神の体は、中参は猿、高野は蛇にてぞましましける。毎年に一度の祭りあるごとに、生贄をぞ供へけるが、その生贄は、国人の未だ嫁がざる処女をば、浄衣に化粧してぞ奉りける。
「今昔」のうちのそんな話は、まいど宮廷ではよく局の夜ばなしに語られていたものである。だから思わぬ僻地でその実演に触れたことが、帝にも妃にも一ばい珍しかったものであろう。
が、群集の中にまぎれ込んでいた三郎高徳の眼は、舞楽仮面の中参の眸のごとく桟敷の廉子を遠くから睨まえていた。
かえすがえす、残念でならないのである。
「ああ、ここに一軍の手勢を持っていたならば」
と、痛嘆を禁じえない。
だが、徒手ではどうしようもないのだ。後醍醐へ近づく望みなどはもう思いもよらない。このうえはただ、大覚ノ宮の安否だけをたしかめて、またの時節を待つとしよう。それしかない。それにしても宮はどうなされたのか。
「よもや?」
彼にはまだ、宮が敵に捕まったとは信じられず、また、信じたくもない。もし事あらわれているとしたら、今日の警戒はもっと厳でなければならないはずだと、考えられる。