Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「なんと、行在所の釈迦堂におわす天皇は、まことの後醍醐の君ではないぞ。どうやらあれは、偽天子だわ」
といわれ始めたものだった。
登山いらい、玉座としている所は、ふかく御簾を垂れて、四条隆資、二条ノ中将為明、中院ノ貞平らが、衣冠おごそかに奉仕のていを作って、めったに人も近づけずにいたのだが、衆目はいつか、簾中の人物が、みかどならぬ花山院ノ大納言師賢であったことを、ふと、覗き見に知ってしまったものとみえる。
さあ、事だった。――蜂の巣を突ッついたような紛議である。非難、腹立ち、失望、呶罵の声など、半日のまに、三塔十六谷の様相は、一変してしまった。
「だまされた」
とする、やり場なさを抱いて、はやくも、山を蹴ッて去る者も多く、また、
「両宮は、知ってのことにちがいない。座主の責任を問え。執行をとらえて質せ」
などという不穏も見え、わるくすれば同士討ちも起りかねない険悪さだった。
そしてその夕も、鴉はギャアギャア嘲っていた。
なにがといって、世に“味方割れ”ほど浅ましい人間の姿はない。また、その陣に在るお互い疑心暗鬼の恐ろしさといッたらあるまい。
釈迦堂の錦旗は捲かれた。