Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「おお、ご帰館だ」
「おつつがなく」
と、つたえ合うやいな、その夕は、家中初めて、眉をひらいた色めきだった。
道誉は、一同へ酒を振舞った。そして留守をねぎらい、長途の供をした将士にも、それぞれ、手当など分け与えたが、
「しずかに飲めよ。まだ、身の嫌疑は晴れたわけではない。これからも当分、道誉は謹慎の身、いずれ鎌倉表から、何かのお沙汰があるまでは」
と、自身はおくへひき籠もった。しかし、家臣の眼からは、どこにも、主人の不平らしさが見えなかった。
こうして、佐女牛の屋敷は、加茂の祭が過ぎても青葉に深く門を閉じて、一切の訪客を謝し、もちろん、道誉自身は一歩の外出もしていない。
「殿」
留守をつとめていた腹心の早川主膳には、主人が何で鎌倉のご不興を蒙ったのか、心外でならないらしく、いまも、道誉が昼酒に鬱を放っているその席で、
「察するに、何者かが、先ごろの旅先から、鎌倉殿へ讒訴でもしたことではございませぬか。何かお心当りでも?」
と、主人の胸へ、自己の不満をたたいていた。
「うるさい」
道誉は、昼の酒気を、青白く眉にみなぎらせた。
「もういうな。無為にこうしているのではない。