Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
そこの仁王門廻廊では、物見の偵報をみな笑った。
「何、たッた六、七百騎の宇都宮勢だと?」
「性懲りもない奴らだ。さきの隅田、高橋の大敗も見たろうに」
「いや、あまりひどい負け方を喫したので、敵は、負け腹立って来たのだろう」
しかし、衆言をよそに、正成の床几の辺では、和田、神宮寺、橋本、安間などの諸将から正季も前において、いつもに変らない正成の低目な声が、なにか諄々といっていた。
情報の聞えと共に、和田孫四郎が「……一気に蹴ちらしてお見せしましょう」と言って出たのにたいしての、ことばであった。
「まあ、待て」
と、正成は、彼のみならず、幕僚すべての燃え逸るひとみを、焦れッたいほど長い思考のうちに抑えてから、
「その小勢が気にくわぬ。小勢は曲者。正成にもちとニガ手……」
と、つぶやいた。
そしてなお、いうには。
「宇都宮は東北一の弓取。わずか七百の兵でも、よく用いられれば、これは恐い。たとえ彼にやぶれず、味方の勝ちとしても、必死の敵には、味方の大半を討死させるかもしれん。止めよう、止めよう……。戦わずして勝つということの方がいい。まして戦は今日だけでもなし、後日が大事だ」