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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

それに命松丸は、きれいな姉でも持ったように「お藤さん、お藤さん」と、つきまとう。藤夜叉にも、いるに窮屈な点は何もなかった。

ただ年齢こそ少し違うが、この命松丸の童ぶりを見るにつけ、

「不知哉丸は」

と、忘れがたい。

たまらなく母情にみだれる。道誉にけがされた体を憎む。なぜか道誉を憎めないで自虐的に自分のみを掻きむしる。

だが二度とは、死など考えに出なかった。いちど死んだのは他人のことのように思惟のなかで区別できる。綯い交ぜられて、自分の心からも肉体の縒からも除けないのが、あの夜の道誉という者と、わが子と、それから、高氏とであった。

「お藤さん」

「なあに」

「お藤さんは、寝てから毎晩、ひとりして泣いてるんだろ」

「そんなことないわ。なぜ」

「だって、朝みると、いつもここンとこが」

と、命松丸は、自分の瞼を、指で抑えてみせて、

「きっと朝は桜色に腫れぼったくなっているんだもの」

「あら、そう」

「また死のうか、尼になろうかなンて、考えているんじゃない? お師匠さんは、尼になるほどなら女に生れなければいいっていってたよ」

「そんなこといったってむりですよ。お師匠さんも男だから女の心はわからない」