Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
ところで、道誉が護送する役割となった公卿は誰かといえば、それは後醍醐近臣中の随一の近臣、北畠具行だった。
北畠ノ源中納言具行は、ことし四十二だった。
かつての正中ノ変の犠牲者、日野資朝や俊基らとは、多年、その理想を一つにしてきた少壮公卿のひとりである。そして、さきの笠置挙兵では、もっとも活溌にそれの実行をおしすすめた天皇幕僚の中心だった。
だから彼のみは、ほかの公卿捕虜の仲間とは、覚悟のほどもちがってみえ、
――鎌倉へ差下す。
と、いい渡されて、獄から板輿へ移されたさいも、
「近江ノ入道(道誉)が、身の護送役とは、よいお介添え。よろしく、たのむ」
と、さすが、悪びれた風もなかった。
そしてはや、護送の人馬が、大津の辺へさしかかると、
「道すがらの徒然だ。佐々木へ見せよ」
と、懐紙の一ト筆を、兵にわたした。
道誉が、馬上、披いてみると、
帰るべき
時しなければ
これやこの
行くをかぎりの
相坂の関
と、あった。
道誉はちょっとほろりとした。元来、彼は心ではよくほろりとする性であるが顔には出したことがない。そんな涙ッぽい粧いは自分の嗜虐に似合わないと知っているせいだろうが、このときだけは真底、何か身につまされたようだった。