Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
中立などは望んでも望みえまい。二者いずれを選ぶかがあるだけだ。
しかし、その点だけなら正成にも迷いはなかった。幕府にも過去の恩はあるが、自分の代となってからは縁もうすい。――ひるがえって朝廷をみれば、その過激な思想や内紛やまた暴走的な挙兵などに、多分な不安も持てなくはないが、ここの御旗の下には一死を賭けていい目標と死のかがやきが考えられた。正季初め、単純な若人ばらの覇気にせよ、功名心だけでもない誉れと死の意味も、一面の気概となっていることは見のがされない。
だが、困るのは、彼らのそうした逸り気だった。彼らは少しも戦争を怖れていない。それが、正成には大きな怖れだった。正成からみると、彼ら若者は戦争を好んでいながら戦争がどんなものかは一こうに知っていない子どもにみえる。
……久子は、良人の正成に代って、噛んでふくめるように、それをみんなにいったのだった。
正成はそのあと、多くもいわず、ただ久子のことばにこう補足していた。
「じつのところ、わしにはまだ一同の腹が、信じ切れていなかった。ほんとの覚悟があるのか否か。わからぬのだ」
しかしその一語は、あらためて、千鈞の重さで各※(二の字点、1-2-22)の生命に深い覚悟の反復を迫ッたらしい。