Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
驕慢な瘋癲の君が、いまは神妙な、いかにも素直な君に見えたからだった。
「……さては、お覚悟よ」と、諸将はみな胸をうたれ、仰ぐにたえない容子だった。とまれ、この期まで高時のそばに残っていた人々は、少なくも高時にたいして、なお臣節を捨てず、理解か同情か、何かは寄せていた者にちがいない。とつぜん、涙を拭く者が多かった。すると、
「まず、太守さまから」
と、杯をささげて、彼の前へ銚子を持って進んだ者がある。
春渓尼であった。
常葉ノ局、むつらの御方、お妻ノ局なども、うしろへ来ていた。
高時は見て。
「おう、みなまだいたのか。いかに悪鬼羅刹の勢でも、女子供までは殺すまいに。……そうだ、そなたたちは、高時のさいごを見たら、東勝寺のおくに姿をひそめて、後日、新田へ命乞いして出るがいい」
「いいえ」と彼女らは、口を揃えて。また咽ぶとも叫ぶともつかない声で――「お供をひとつにいたしまする。世に生き残る心はさらさらございませぬ」
「では。そなたたちも」
「はい」
「わしに殉じて死にたいと望むのか。……はての。この高時が、そんな倖せ者とは思わなんだ。死出の道、賑やかなことではある。