Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
犬神憑き
すでに、葛西ヶ谷いちめんは、冷たいような猛火だった。極熱の炎が燃え極まると、逆に、しいんと冷寂な「無」の世界が降りて来る――。
東勝寺の八大堂は、二日二た晩、燃えつづけた。あとには、八百七十余体の死骸があった。死なずともよい工匠たちの死体も中には見られたとか。――総じて、鎌倉中での死者は、六千余人にのぼったという。
また。それから二日後。
五山の一つ、円覚の一院では、高時の生母覚海尼公と、法弟の春渓尼とが、五月の朝の朝ほととぎすをよそに、姿を並べて自害していた。
犬神憑き
鎌倉幕府はここに亡んだ。
炎々数日らいの湘南の兵火は、昨日までのあらゆる権力のあとを焼きつくして、時の空に、
夢
ただそれしか思わせない余燼のけむりを描いていた。そして新たな“時の人”新田義貞の名が、焦土鎌倉を産土として、はや次代の人心に、すぐ大きく映りはじめている――。
だが、一夜に百五十年の武家機構とその経営の府が根こそぎ崩れ去ってみると、こことて、ただの関東の一海浜で、しかもあわれな瓦礫の町にすぎない。
時の人。それは誰か。果たして自分か。義貞といえ、まだまだ、驕ってはいられなかった。