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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme

Aozora Bunko

ところが、ここに。

「はて?」

と諸人をあやしませていたことがある。当然、率先して、父君のこの還幸をお迎えに出ていなければならないはずの大塔ノ宮が、信貴山の毘沙門堂から降りても来ないことだった。

平和は回った。市はひらかれ、諸国の商人もどっと入って来て、万戸の賑わいに、

「やれやれ、やっと、陽の目が見られた……」

と、その日暮らしの貧者までが、心の底から涙していた。無条件に、ただ平和だけが、彼らの待っていたものだったのだ。

それほどな今なのに。

なぜか。この平和に、不服らしいお人がいる。大塔ノ宮護良親王のご態度である。それはたれにも解せないものに見えた。

「信貴山といえば、つい洛外においでなのに」

「どうして、宮だけは還幸の日にもお見えあらず、以後も山から降りて来られぬのか?」

人々の揣摩臆測は、一日ましにたかまっていた。――ここ数年、ご父子は遠く別れあって、流離艱難、ただ今日のために戦って来られたものであろうに、なぜ、何はおいても、

お顔だけでも。

と、父皇のもとへ奔っては来られぬのか。それが人の子のあたりまえな姿だろうに、何がそこまで宮をして頑なにしているものか。