Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme

Aozora Bunko

銭でお払いなすってください」

「銭など持たん」

「じゃあ食い逃げなさるおつもりなんで」

「こいつが」

と、やにわに、侍の一人は、亭主の襟がみをつかんで。

「かりにも、大塔ノ宮の候人、殿ノ法印殿に扶持されているおれどもをさして、よくも食い逃げ武士と、汚名をきせたな。――しかのみならず、御新政の楮幣をば、ちょろまかしの紙キレと吐かすなど、怪しからん奴だ。もうゆるせん。さアこう来い」

盛り場の辻でもある。

まわりはたちまち黒山の人だかりをみせていたが、こうなると、わっと一角から崩れ立つ。

居酒屋の女房であろうか、

「――助けてえっ。うちのひとを。うちのひとを」

と、はだしで駈けて行くのもみえたが、殿ノ法印の身内と聞いては、たれも恐れをなして、詫びてやる者もなかった。そしてただ「ちょへい? ちょへい?」という怪訝りの小声だけが、魔のきみたいに、盛り場の昼を、吹き廻っていた。

宮の候人、殿ノ法印良忠は、大塔幕下第一の羽振り者だが、神泉苑にちかい六角の彼のやしきも、宏大なこと、世をも人をも恐れないものがあった。

朝から晩まで、人出入りが多いのも特徴で、「……今日は何があるのか?」