Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「ひかえろ」
道誉は喧嘩の中へ来て、まず自分の供侍らを叱りつけた。
そしてすぐ、馬のかしらを曲げ、文観のそばへ来て馬を降りるやいな、
「まことに慮外なご無礼を。……家来に代ってお詫び申しあげる。さ、どうぞお先にご通過を」
と、謙虚に言った。
「や、佐々木殿ご自身か」
と、これには文観も恐縮ないろを見せ、おなじく、馬をすべって、あいさつを互角にした。
おれが、おれが、の時代である。人の後ろにかがんでいては恩賞にも屁にもならぬ。そのままにさえ踏みつけ去られる。これが時人のあたまにあった。道行く列の色一揆なども、つまりは、おれ見よがしの流行だろうか。
「いや、無礼のかどはお互いとしよう」
文観は、にんまり笑う。
精力的な五十歳がらみの肉むらをくるむ紫衣と金襴からは、名木の香と人間臭とが一つに交じって立ちのぼっている。
「なにせい昨今、洛内の人口は、古今未曾有な殖え方だとかいっとるの。しぜん往来も気が荒うなるのじゃろ。つい道すら譲れん意地張りになるとみえる。あとで供のやつらを叱りおこう。道誉どの。お腹を立てまい」
「なんの……」
と、一そう道誉はいんぎんに。
「おそらくは参内のご途上でしょうに、どうぞお列を先におやりください」