Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「上と、仰せられるのは」
「申すまい。だが河内どの。ご辺も存知のはず。六月七日のあの夜以来、尊氏は気鬱とでもいうか、ややもすれば近ごろ気疲れに負けてくる。……そうした折に、ありがたい忠言だった。ご友情は心から謝しておく」
「いやこれも、世を思う微衷のほかではありません」
「世を思う。いかにもな。尊氏とて世は思う。一つ心だ。では河内どの、ご辺には今の王政一統なる御政道ぶりを、どう考えておられるの?」
政治への批判を求められると、正成は、あきらかにそれまでの平静をやや欠いて、
「さ。公家御自体にしても、決して、いまを善政とは、満足してもおられますまい」
と、当惑な色をみせた。
そして、口をとじたが。また、口おもたげに。
「延喜、天暦のむかしに回すというご理想も、当時の世でこそ、万民謳歌の美しい統治の実を結んだでしょうが、今日の土壌では民ぐさの生活がまるでちがいます。廟堂もまた、いにしえの大宮人の心ではありません。それを今に復古して、実績をあげるには、なおいくたの困難と上下の協和とがなくては能わぬところで、真の御世泰平を仰ぐ日は、まだまだ遠い日と覚悟せねばなりますまい」