Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
そこへたった今、探題の郎党小串兵衛ノ尉が来て、
「はや、ここもあぶない。主上、両院、皇后、すべての方々にも、お立退きのご用意を! 一刻もはやくお立退きを!」
と、どなり捨てて行ったばかりなのだった。
さすがこんなさいになっても、主上の御簾のあたりはなお、しずかだった。
光厳帝はまだお若くて何もご存知でないとすらいってよい。けれど北条幕府のこしらえで擁立された天皇である。こうなれば北条氏と運命を共にするしかないというご観念だけはかたかった。
「まろは、あとでよい」
泣き伏す皇后の背へお手をかけて、別離と、いとしみの耐えを、お唇もとに、
「ともあれ、皇后やらあまたな女房たちを先に、ここから落すことにせい。……敵とて、よもや女子供に、むざんな所為もいたすまい」
と、うろたえている三条、鷲尾、坊城などの諸公卿へ、くれぐれ、皇后のおからだをお頼みであった。
光厳すら二十歳である。皇后はもっとお年下でまだあどけない姫宮ともみえるほどだった。お身をもだえて、なかなか帝のお袖を離れるふうもなかったが、そのときほかの女院からまた女房や女童まで、みな泣き顔をつつんで帝へお別れをつげに来たのをしおに、皇后もやっと泣く泣くお手をとられて立った。