Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
……腹切っておわびのほかには」
「腹切りなど見とうない。わびられたとて、どうなろう」
「なにとぞ、いまは早や一刻もおはやく」
「落ちろとか」
「仲時、また時益も、斬り死にいたさんと申し合いましたなれど、いや、主上をはじめ両院その他の方々を、ここで敵手にまかせては、御運のほどもいかがあらん……。それよりは生き恥たえて、いずこまでもおん供すべきであるまいかと」
「それ、すすめるなら、なぜ昨日のうちにすすめぬ。せめて今日の早くにすすめざりしか。ええもう、追いつかぬわ。仲時、供の人数はどれほどある?」
「まだ千余騎はおりまする」
「たった千騎か」
刻々、敵軍のせまるらしい物音は夜の潮鳴りにことならない。後伏見(法皇)は、仲時を烈しくお叱りになりながらも、ついにはお茵を立って、
「ぜひもない。……花園」
と、弟ぎみの花園上皇へ、
「落ちよう!」
とお声をかけた。
そして、みかどへも、といわれたが、その光厳帝は、もうこれへ来ていて、
「おん衣を。……お袴のすそを」
と、後伏見の身まわりに、かいがいしいお手をかしておられたのだ。
それすらお目に映らなかったほど、とっさに近侍の公卿から宮人のすべてがまわりをお囲みしていた。