Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「そうか」
仲時は低くつぶやいた。
「越えるには、覚悟をということなのだな」
しずかに彼は全軍の士へ露営を命じた。またせめて、主上、法皇、上皇、女院がたなどには、蚤虱のなやみや馬の尿に近いむしろはぜひないとしても、露をしのぐ茅屋根の下でもと、自身奔走していくつかの山家を御宿所にさがし求めた。
この仲時は、さきに六波羅を捨てると決して、天子の蒙塵をおすすめしたさい、天子の御父後伏見からいたく責められたことを、心魂に徹していた。
また、勅を請うての一策も手おくれに終り、万策ここにつきるにいたった責任も、探題として、つよく感じているらしい。それがだんだん彼をしてまだ二十八の人ともみえぬ燻みをその満面にただよわせていた。
「朝となれば、後陣の六角時信も追いついて来ようし、使いを派せば、伊吹の道誉も、加勢に討って出てくれるにちがいない」
彼自身は、天子のお小屋のそとなる樹下に眠って、なおそうした希望の東雲を、胸にえがいていたのではあった。
たえず油断がならない。賊の奇襲が恐ろしい。
それと山は五月の湿度だった。山蛭やヤブ蚊の責めや、また、一種の青葉蒸れが、よろい固めの五体をやりきれなくして、仲時はつい眠りもえなかった。