Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme
「いや、まことに」
師直も苦笑した。
「こよい初めて、沁々と、虫の音の秋を、耳の底に覚えたわえ。何せい、昼は、やれ朝廷の、やれ政所の、また将軍家直々のお召のと、いやどうも執事職とは忙しいものでの」
「それに、夜は夜ごとの宮廻りでしょう。よくお体がおつづきになる」
「わはははは」と、師直はてれかくしな豪笑を発して、大きな蜘蛛が糸からすべり落ちたようにその手を振った。「痛いことは仰せられな。おたがいさまだ。それ、人には七癖とか。ひと癖は執事にもゆるされい」
「ちと冗談がすぎましたかな。御執事は正直でいらせられる」
「そうだ。御辺はずるい」
「これはさっそくな御返報。いかにも道誉にはそういわれても仕方がないところがある。しかし御執事、それがしは陽性のつもりでいます。ご存知の一穴の貉のごとき陰性な者とは御同視なきように」
「貉?」
「さればあれは仲のよい貉のような者たちでしょうが」
「とは、誰をいうのか」
「なんの御執事にはとうにおわかりになっているはずだ」
「いや、存ぜぬ。一穴の貉とは誰をさして?」
「では、まったく御存知ないのですか」
そこで道誉は半身をのり出して肩をおとした。