Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
また今日、立ち帰って来た出屋敷の危急を見て、頼春が、「こここそ、自分の死所」とばかり、われから捕吏に身をまかせて、捕われて行ったことなども、つぶさに告げていたにちがいない。
「……が、事々残念ばかりでもございません。加賀田の山奥では、やがては宮方のお力にもなろうかと思われる一隠者に出会いました。その人は」
と、彼が、毛利時親なる人物の発見を、ここで熱心にしゃべり出したときだった。急に、俊基はその声を抑えて、
「しっ……」
と、苫の外へ顔を出した。
つい近くの杭に、もう一そうの苫舟があったのである。人もなきかのようであったが、チラと小さい灯が点った。そして弱々しい赤子の声が、ひイっと、水に響いて来たのだった。
赤子の泣き声は、まもなくやんで、夜はまた、芦のそよぎもない、水しじまに返っていた。
「やれやれ、赤子でよかった」
菊王は胸をなでおろして。
「……舟住居の夫婦者か何ぞでございましょう。まず大事はありませぬ」
彼はまた、話をつづけた。
毛利時親
についてである。
菊王としては、隠者時親に、よほど心をひかれ、一個の有力な宮方お味方の発見とまで考えているらしいが、日野俊基は、そうは買わない。