Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
みなかみの家
兼好は、道を北の方へ、飄として、立ち去った。
彼と別れた元成と卯木は、当麻越えに出て、翌る日からは、河内へ入った。――六月に入ってもまだ一ト粒の雨すらみせぬ旱の空は、乾き切った山野の人畜とは没交渉なもののように、この数日も、照りつづいており、石川、石見川、東条川、水分川、どこも水涸れ涸れな姿だった。
「卯木。疲れたのか」
「いいえ」
「足が重そうな」
「でも、やがて」
彼女は、笠へ指をかけた。
富田芝(現・富田林)二里の曠野は陽蔭もなく、涸れ川のみなかみを見やれば、金剛山の巨大な胸に眼がつきあたる。卯木が十三、四の頃までいたふるさとの山すそは、もう近かった。――が、近づくままに、彼女は不安になった。
兄の正成、正季などが、どういうであろう。また、何とわび言をしたものだろうか。俄な胸騒いが痛むのだった。
みなかみの家
「正季どの。居るか」
突拍子もない大声である。
四隣は深い檜林だ。
その檜がみなミンミン啼いているような蝉しぐれの中の武家玄関なのである。よほどな声でないと、奥まで訪れがとどかない気がするものか、
「天見ノ五郎でおざる」
「まった、中院ノ雑掌俊秀ですが、ご不在かの」