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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

――母屋の灯は、どこのも暗く揺れ、また、どこかでは、ふと、正成の咳声がする。

卯木は、胸せまるものに、はっと、緊めつけられた。――咳声のぬしは、兄正成とすぐ感じたが、なんとその咳声の、亡父正遠にそっくりなことよ。――そこに兄妹の亡き父がいるのかと怪しまれもしたほどだった。

「卯木か」

正成の声が「――入れ」と内で宥っている。その側には、正季もいた。卯木は、裁きの前にすえられたように、ちょっと、良人の顔をうながして、共に片隅へ手をつかえた。

「……これは初めて、御意を。不届き者の、服部治郎左衛門にござりまする」

元成は、正成の姿を見ると、すぐ喘きあげるように、こういった。

「お手にかかって、御処分を受けるぶんには、如何ようなお仕置に会おうとも、異存はございませぬ。お詫びは――御舎弟の正季どのまで、今日までの仔細と共に、つつみなく、申しあげてはありますが」

「お……。あなたが、治郎左衛門元成どのか」

正成は、こころもち、頭を下げて。

「奇しき御縁で、ひとりの妹が、女の生涯を、あなたへ頼みまいらすこととはなった。お目にかかるは初めてなれど、日頃とて、いかにやあると、忘れたこともありませぬ。