Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
商売はうまいらしい。
「うちの旦那は、商売知らずさ」
長屋へ来れば、はばかりもなく喋ッている。
「それやあ、資本は柳斎旦那から出ているよ。だがね、わずか四、五年のまに、こう店を手広くしたものは、この鳶七さ。……だからおれには何でも任せきりだ。そして旦那は、ふところ手さ。あんないい身分はないやね」
しかし、禿鳶もまた、悪い身分ではないようだった。“通い手代”で、店へ来る日もあれば、来ない日もある。――なんでも、神崎の遊女をひかせて、難波の合邦ノ辻あたりに囲っており、そこから通っているのだと、長屋中ではいっていた。
「おお、卯木さん。お漬物の漬け込みかえ」
「これは鳶七さま。二、三日お見えなさいませんでしたが」
「風邪ぎみでね。……ところが、今日出てきてみると、柳斎旦那は、おとといの晩とか、急に、旅へお出かけだってな」
「ええ、急な御商用で、丹波まで行って来るとか仰っしゃって」
「それがおかしいんだ。丹波と言ったかね、ほんとうに」
「そう伺いましたが」
「丹波の領家なんて、お花客すじにも、心当りはないんだが。まあいいや、独り者の柳斎旦那だ。丹波であろうと、江口、神崎であろうと、そのうちにゃ帰って来なさるだろうて」