Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
「さあ、手をお出し」
と、舟べり越しに覚一の手を取って、舟の内へ助け入れ、
「そら、あぶないぞ、ここへ坐るがいい」
などと、一隅の席も空けてくれた。そのうえ皆して、
「尼前の息子か。やれやれ、何も見えぬとは気の毒な」
と、見かけによらぬ親切そうな眸であった。
それに、ほっとして草心尼も今はただ、都へ着きさえすれば、と念じていた。
すぐその後から、さっきの武士が、一同の腰糧を抱えて飛び込んで来た。それを合図に、武士たちは船頭を叱咤して、すぐ舟を出させた。淀の川風は、たちまち、頭の上で、はたはた帆鳴りを立て出した。
白い川波が颯々と立って来た。
淀の上りといえば、遅々として、舟に飽きるのがふつうだが、迫い風を孕んだ帆は、またたくまに守口を過ぎ、やがて鳥飼を左に見ていた。
「速いぞ、今日は」
郷武者らしい七人は、食べ終った弁当殻を、各※(二の字点、1-2-22)舟べりから投げ捨てると、矢のようなその行方を尻目に、あとは、酒と茶碗だけを前において、
「このぶんでは、明るいうちに、男山へ行き着けそうだな」
と、しきりに気勢を揚げ合っていた。
舟の中には、船頭とそして、盲法師の子をつれた尼しかいない、と安心しきっているのだろうか。