Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
「そうかい、では、見つからないはずだよ、雨露次さん」
「えっ?」
雨露次はすぐ、色をかえて。
「卯木の身は、どうかされたのでございましょうか」
「いや、いや。これや、わしの言い方が悪かった。びっくりなさることはない。見つからないはずといったのは、わしの計らいで、あの藁葺御堂の観音堂の内に、こないだ中から、そっと寝かせておいたわけさ」
「ああ、では、あの御扉のうちに寝かされておりましたのか。妙達さん、お礼のことばもございません」
「……が、待っておくれよ。そう、よろこばれると、言い出しにくいなあ。びっくりなさるといったけれど、じつは、おまえさんのびっくりしそうなことが、ほかに一つあるんだよ」
観音堂といっても、ほんのワラぶき屋根の仮御堂である。せまい、ほの暗い、須弥壇の上に、聖観音の光背までが金色の蜘蛛の巣みたいに仰がれる。
卯木は、この間じゅうから、ここの御壇の下に、寝かされていた。
それも六波羅兵のいたわりだったわけではない。堂守の妙達とは、日ごろ顔見知りだったので、御扉を開けてくれたのも、薄い夜の具をかしてくれたのも、みな彼の親切だった。
しかし、兵がいる間は、妙達も、思うままには、ここへ来てもやれなかった。